テキストサイズ

トクベツ、な想い

第15章 15





タバコを咥えたままキッチンに足を進ませて

冷蔵庫からビールの缶を出し、プシュッと開けると口許のそれを指にとってから煙と一緒に飲み込んだ


いつもより数倍苦く感じて顔が渋る



「…今日来んのかな…」



特に約束をしているわけでもない
残業って言ってたし、もしかしたらあの子も一緒に…


思った途端、飲み掛けの缶ビールを置いて
シンクの下の棚から焼酎のビンを乱暴に出した

グラスに注いだ量を一気に飲み干す

すぐにかぁっと喉が熱くなって、きついアルコール臭が鼻を抜けた



「っは…やっぱ割らないと、ダメだな」



何やってんだか…


呆れながら口の中を洗浄する為、浄水器からグラスに水を出している途中

玄関からカチャリと音がした

ドタドタと聞き慣れた足音が近付いてくる



「お疲れ…」


「…翔くんまたタバコ?」



険しい顔をして俺のいるキッチンに寄り
指に挟まれたものに視線を送ってすぐ、ため息が吐かれた



「おまけに酒臭いし」


「…飲んでたから」


「どうしたの…」



潤の手には弁当屋の袋がぶら下がっていた

思い出したくないのに、あの時の記憶の断片が脳裏をよぎる

結局もらったのか、食べたのか…確認してない

あの子の名前を聞きたくなくて口に出せない



「あ、これ食べたくなったか…わっ」



気付いたら潤を抱き締めていた



「酔ってんの?」


「…かもな」



袋を手からスッと抜き取り床に置いて
タバコをシンクに捨てると手を掴み、ぐいぐい引いた



「っちょ…えっ、え?」



勢いをそのままに寝室をバンっと開けて潤をベッドに放り投げる

電気もつけずに薄暗い中、唖然とした恋人の上に跨がった



「しょ、翔くん!?」


「ごめん」



口では謝りつつ戸惑い回る手を払い退けて
ワイシャツのボタンを待ったなしに外していき、前を開いた

程よく鍛えられた体…見惚れてしまう



「…どうしたの…翔くん」



潤の指が俺の頬に触れ、拭うように動いた

それに瞳を揺らして
慌てて自分の目を擦れば指が濡れたことに動揺する



「なんで…」


「おいで、翔くん」



俺に向けて広げられた両手
吸い込まれるように従って、潤の体へ身を落とした



ストーリーメニュー

TOPTOPへ