テキストサイズ

トクベツ、な想い

第16章 16






あんなに悩んで恐れていた行為は今や俺を安心させるものでしかなくなって

不安になったらタバコではなく、すがり付くように求めた


拍子抜けしてしまう


惑わせたあの子の言動が俺達を深めた

考える必要なんてなかった


そう思っていたから

だから突然すぎて動揺したんだ


避けられそうな弾に自ら当たりに行ったようなもん

まともに喰らった、潤の誕生日が近付いていた8月










ー朝からグラスが割れて、嫌な予感がした

だってこういうのはドラマじゃ定番だろ?



「…なんてな、あーもうめんどいなー」



今日は朝早くから会議で急がなきゃいけないのに

飛び散ったガラスをとりあえずシンクに入れて、さっとタオルで床を拭いた

時間を見て、ヤバイと必要なものを持ち部屋を飛び出す

今日は潤の弁当はないので
コンビニに寄った袋をぶら下げて出勤していた


あぁ…予感はこれだろうか

会社の入口に会いたくない女の子がこちらを見て立っていた



「櫻井さん、おはようございます」


「…おはよ」



挨拶ぐらいはと小さく言って通り過ぎようとした時、腕が掴まれた



「っ…何?」


「あの、今日私…朝の会議の準備をお願いされてるんですけどよく分からなくて…教えてもらえませんか?」


「…え…新人だから1人じゃないでしょ…?」


「もう1人一緒にやる予定だったんですけど、遅れてるみたいで…早くしないと始まっちゃう…」



本当に焦ったように顔が歪んで、どうしようと繰り返し言っていた

事前に教えられてるとは思うけど…
もしもの時、その遅れているもう1人がいれば大丈夫だろうとEA部の部長は思ったのか

こういう事態も把握していてほしかった



「…お願いしますっ」



何度も頭を下げる彼女が不憫に思えて…渋々了承してしまった


会議の部屋へ行く前に
一旦自分の部署に寄って荷物を置き、少しやろうとしていた書類なんかをデスクに出しておいて

今回会議が行われる"第一会議室"に向かった



「…なんだ、必要なものはまとまってんじゃん」



部屋の電気を点けて即、机の上に積まれた会議用の資料達が目に入った



「あれ並べて、スクリーン出して、後…」



ある程度指示し終わったら
自分の準備もあるからと出口のドアノブを掴もうとした


ストーリーメニュー

TOPTOPへ