トクベツ、な想い
第17章 17
服も、電気も、冷房もそのまま…
ソファに埋もれて朝を迎えた
頬がまだ濡れている感じがする
「……」
ぼーっと目を開けているだけなのに涙が溢れて横に流れる
何も飲んでないのに…あんなに泣いたのに…
「…男同士…」
御越さんに払拭してもらった言葉…
今度はトゲと化して心に深く刺さってる気がした
そうやって俺を更に苦しませるのか
必要ないだろ
「…もう…終わったんだよ…」
終わっちゃったんだよ…
潤は、もうここに来ないだろう
もう会えない…
もう会わない…
ふらふら立ち上がってシャワーを浴びにいった
コックを捻って壁に掛けてあるヘッドから生温い水を出し、頭から被る
「…夢、だったんだよ」
タイルに流れ落ちて排水口に吸い込まれる水
当たり前の一連を見ながら、何度も自分に言い聞かせた
4ヵ月…何もなかったんだ
全部、俺の妄想
男同士ってのがリアル感なかったけど…
中々できたシナリオだった
元カノの時のよう
あぁ違うな…あれは本当に何もなかった…
なんだ…空っぽだな…俺
そう思うと少しは気が紛れたような気がした
「…はぁ…」
俺が何をした…
ただ…好きだっただけ…
もう望まないから
1人でいるから
もう苦しみから…俺を開放してくれ…
1時間も浴びてしまって、会社には朝礼時間ギリギリに着いた
頭の痛みは薬が効いてきたみたいで落ち着いて
でも心はずっとズキズキと痛んだ
昼休み、俺は食堂に行かなかった
待田には適当に言い訳をして喫煙室でタバコをふかしていた
仕事中は色んなことを考えてしまって…
この時間だけが精神を安定させてくれた
何本目かのタバコを押し消し、時計を見る
まだ半分程、時間に余裕があるのに箱の中身が終わってしまった
とりあえず喫煙室を出て
「…どうしよ…」
ぼんやり立ち尽くしているところに葵ちゃんは現れた
「あ、食堂来なかったですね」
「……」
何も言わず彼女と逆方向に足を進めた
君に会いたくなかったんだよ…潤にも…
「待ってください!」
小走りで近寄って腕を掴まれた
不機嫌全開でそれを振り払う