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トクベツ、な想い

第17章 17






「何かあったんですか…?」



…どの口が言ってんだか

ふふっと笑いが溢れた



「…関係…終わったから…もうなんでもないから…」



前を向いたまま、口の中をぐっと噛んで
目尻に込み上がってきそうなものを止めた



「…好きにすれば?」



もう渡さないとか、止める権利はないんだ

そんな言葉の力も失ったんだ…


再び歩き始めるとまたも腕を掴まれた

今度は力を込めてガッシリと手が絡められる



「はい、好きにします」



この状態で足を進ませるわけにもいかず
苛立って振り払おうとしても隙がない程に密着していて離れない



「…はぁ…離せよ…」


「櫻井さん、もらいます」


「…は?」



思わず振り向けば素直ににっこりと笑われる

いつも俺に見せてる顔とは違うのに驚いた


いや…望みは潤なんだろ?



「…私が、慰めてあげますね」



何言ってんだよ…

君が壊しておいて

俺達を…壊しておいて…



「っふざけんな!」



強引に腕を引き抜いて
その子が寄ってこれない男子トイレに駆け込んだ

何人か用を足しているのも関係なしに個室に入って



「ぁあ"っもう!」



髪を掻き乱しながら叫んだ


これ以上俺をボロボロにしてどうしようってんだよ…



個室から出たのは
昼休憩が終わって少し経ってからだった









ー8月後半

今日は遂にアプリのお披露目会見がある

名のある会社なだけに期待は高まって
会場はきっと熱気に包まれているんだろうな…


部内のパソコンでLIVEであるその様子をみんなで見ていた



「あっつ…」



群がって見るから人の熱がすごい

ワイシャツ越しにちょっと触れた男性社員からも高い熱を感じて、堪らず画面の場から離れた

冷房はエコだと全然涼しくないし

だからクールビズとしてワイシャツだけなのに
あんなに寄ったら汗っ掻きの俺には拷問だ



「はぁ…」



仕事の成果を見るのは嬉しいけど…何もこんな沈んでる時じゃなくても…


自然と、手が首に回った

…前に痕をつけられたところ…もう消えてしまったけど

まだここにも、唇にも…

体全部に…潤が残ってる


とても夢で納得できるわけもなく


…またうじうじと未練を垂らす櫻井翔になる



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