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トクベツ、な想い

第4章 4






程なくして店を出た

会計の時、彼女は当たり前のようにゴールドカードで支払いをしていた


やっぱりお嬢様…


俺には一切払わせてくれず、合計金額さえ教えてくれなかった

みゆちゃんなりの気遣いなんだろう



「家まで送るよ、もう遅いし」


「いえ、タクシー呼びましたので1人で大丈夫です…それに…恥ずかしいので」


「あ…そっか…」


「…会社ではまた普通に接してください
あんなこと言って、そんなわけにいかないかもしれないですけど…」



小さく頷くと俺達の前にタクシーが2台止まった

タクシー代を渡してくる手を押し返し、お互いに挨拶を交わすと車に乗り込んだ

行き先を言って2台のタクシーが動き出す



「…はぁ…」



一気に肩の力が抜けた

背凭れにもたれながら、自分の腑抜け具合とみゆちゃんとの身分の違いに凹んだ










―自分の部屋に着くとカバンをソファに投げ寝室のベッドにダイブする



「…少し経ったらっていつ…いや返事の前に、…あんなゴールドカード持ったお嬢様と付き合えるのか俺」



俺はあの瞬間怯んだ
本物のお嬢様…

あっちが良くてもきっと俺は気にする

もちろん金を持ってる持ってないの問題じゃない…でも…


折角みゆちゃんとして見れるようになったのに…
今回の方が簡単にはいかなそうに感じた


とりあえずまだ時間はあるから…ゆっくり考えよう



ベッドから起き上がってスーツを脱ぎクローゼットに入れる

部屋着になってソファに投げたカバンの中からiPhoneを取り出すと光っていた

みゆちゃんからのメールで
お礼とまた食事に誘いますという内容だった



「返事…とりあえずシャワー浴びるか」



浴びながらなんて返信しようか考えて
無難にまた行こう的な返信をした










―次の日


いつものようにコンビニ袋を片手にぶら下げながら自分のデスクに座って、軽く待田と会話をする


少ししてぞろぞろと社員が出勤してくる
その中にはみゆちゃんもいた

今まで通り挨拶をしてきたので俺も今まで通り返した


普通に接してくれって言ってただけあって
ホントに普通だな…





また忙しい日々が過ぎた

たまにメールしているが、答えは出せないまま



俺は彼女を好きだけど…


どうすればいい…


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