トクベツ、な想い
第5章 5
お嬢様と一般人との恋なんてさぞ面白いだろう
ドラマでならありだ
だが俺の今の状態はドラマにならない
女性には玉の輿と喜ぶ子もいるだろう
きっとみゆちゃんの家には、あの高級レストランにいた完璧なまでのウェイターのようなメイド達がたくさんいて
並べられたナイフとフォークのようにきっちりとした家柄で…
俺には窮屈に思えた
そもそも部屋の片付けさえまともにできない、ただ同じ会社というだけの男が
格式のある敷居を跨げるはずもない
でもきっとお互いが好きならば
なんてドラマで言いそうなことを思ってみたが
まさかの展開、
みゆちゃんへの想いが揺れだしてきている
徐々に育っていった想い
始まりは元カノがきっかけだったけど
″みゆちゃん″を好きだって思えてきたところだったのに…
それが今は前ほどではなくなってきてる
お金持ちと動揺したから…?
いや、それだけじゃない
心の片隅で″何か″が俺の想いにしがみついてる
お嬢様だって家柄だって関係ない、好きだ
そう言い切れないようにしているのはなんなんだ
それが分からない…
こんなんじゃドラマになんてなりゃしない
2月に入る前の数日の間、
俺は仕事をしながらもこんなことを延々と考えていた
―2月に入って少し経った
全く解決しないまま
毎夜、金に追いかけられる夢にうなされる
「…はぁ…なんてシビア…」
頭の中がぐちゃぐちゃだ
″良い返事″なら言うんだよな…?
どうしよう…こんな中途半端で言えるわけない
食事に行く前と後でずいぶん変わってしまった
みゆちゃんからの誘いが嬉しくて、あんなにドキドキしたのに…
そんな想いだったのかよ…
考えれば考えるほど、こんなあっさり薄れて…
最低か俺…
潤にも後押ししてもらったのに
その瞬間ハッとした
潤…そういえば最近会っていない
正しく言えば俺の誕生日以来か
みゆちゃんにばかり気をとられていたせいだ
ぼーっとはしてたがそれでも仕事はしっかりしていたつもり…
「こっちにきてたEA部の人達はほとんど同じだった気がする」
なんとか最後に会った日から今日までの人の流れを、思い出せるだけ思い出していった