
トクベツ、な想い
第5章 5
ここ最近俺が頼むことは何もなくて…
でも暇ではないから誰かしらに頼まれて来たりしててもいいとは思うんだけど…
俺の記憶が確かなら来てないな
電話もメールも特にしていない
そもそも会社に来てるんだよな…?
ふと自分のデスクのファイルを並べているスペースに、資料が挟んであるのを見て
「これ借りてたやつだ…」
それを片手で持つとおもむろに立ち上がった
EA部の入口付近で中を覗く
すかさずあの時の女の子が近付いてきた
「松本くんですか?」
「うん、お願い」
笑顔を見せながら潤のデスクに駆け寄っていった
あ…来てる
しかしすぐに女の子だけが戻ってきた
「すいません…松本くん忙しいみたいで
代わりに私が受けます、ご用は?」
「あ…この資料、松本くんから借りてて
これ返しにきただけだから」
「はい、じゃあ渡しておきますね」
「…お願いします」
忙しい…そうか
きっと運用とかの方が手が回ってなくてサポートしてるんだな
ならこっちに来てないのも納得だ
教えてって言われてたからちょっと話したかったな
このもやもやした気持ちもできれば相談したかった…
でも忙しい割りに見たとこ部内も潤も忙しい雰囲気はしないんだけど…
俺が分からないだけか…?
戻ろうと体の角度をかえようとすると潤がこちらを見ていた
視線が合ったのでそちらに向かい軽く片手をあげる
スッと視線を逸らされた
「…え…」
予想外のことに動揺して瞳が揺れた
しかし先程の女の子から俺が渡した資料を受け取ると普段通り笑っていた
あれ…気のせいだったのかな…
デスクに戻る途中、今日メールしてみようと頭の隅で思った
―仕事が終わりマンションに帰った
風呂と軽い晩飯を済ましてソファに座り一服する
テーブルの上のiPhoneをとって
『お疲れ、あの資料ありがとう
すごい役に立った
この前潤が言ってた飲みの話、店とか決めようか?』
メールの内容にそう打ちこんだ
タバコを吸いながら返信を待ったが
中々返事が来ないので、テレビをつけてなんとなくニュースを見る
「…忙しいって言ってたもんな
仕事持ち込んでやってんのかも…」
