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トクベツ、な想い

第5章 5






俺の悩みの種が2人…笑顔で話していた



「よろしく」


「え、は、はい」



紙を強引に押し付け
催促の話をするのも忘れて足早にそこを離れた



「なんなんだよっ…なんで…」



俺は今、どっちに腹を立ててる?



俺を好きと言っといて他の男と楽しそうに話してるみゆちゃん?


いきなり俺を避けだして他の人には笑顔を見せてる潤?




考えながら男子トイレに入り個室のドアを荒く閉めて、洋式のフタの上へ座った



前屈みになって両手で頭を抱える



しばらくそうしてから
おもむろにズボンのポケットへ片手を伸ばしタバコの箱を取り出した


…まだ休憩じゃないし
トイレでなんか吸ったら怒られるよな…


そう思いとどまってポケットにそっとしまう


冴えない顔で個室を出て、渋々デスクに戻った



仕事中も苛立って仕方なかった










―休憩に入ったと見るや立ち上がり喫煙室へ直行する



そこへ入る前からタバコの箱とライターを出し
ドアを開けて素早く閉めると、1本口に咥え込んで先端に火を付けた


眉を寄せつつ何回か吸って肺を煙で満たす


立ったまま壁に背中を預けると指でタバコを掴み、唇からとって、肺に溜め込んだそれを一気に吐き出した


白い煙が俺の前でふわりと舞う


少し気分が落ち着いた



「…スーツ汚れんぞ?」



待田がうっすら驚いた顔を見せ入ってきた

汚れたら困ると俺は壁から静かに背中を離す



「どうしたんだよ、お前そんなタバコ吸わないだろ
ここにもあんま来たことないだろうし」



タバコを咥えたまま待田が心配そうに言う



「昔はよく吸ってたよ、俺
…会社入る前の話だけど…最近また増え始めたんだ」


「体によくないぞー」


「お前に言われたかないね」



いつものくだらないやり取りが僅かに俺を和ませた










―何日か過ぎたが状況は変わることなく

タバコの数もいっこうに減らない



みゆちゃんからは相変わらず食事の誘いや当たり障りのないメールがくる


それを見ては2人でいた場面を思い出し色んな想いが揺れた


これで誘いになんて乗れるわけないと断ってばかり、返信もまともに出来ず




押し寄せる出来事に心は疲れ

次第に弱っていった



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