トクベツ、な想い
第9章 9
確かにそれを、その時の気持ちを潤に感じてもらうことはできないけど
嘘じゃないんだ
少なくとも女性以外に反応してしまった下半身が証明をしている…が、そこまで口に出すことはできなくて
「潤は…?
俺を好きな理由、潤だって曖昧だったろ…?」
「……だって……いつの間にか好きだったから…」
「それ、一緒だって…言ったのは突然だっただろうけど
想ってたのは前からだったんだよ…気付かなかっただけなんだ……ごめん」
「………そんなこと言われても…
もう…パニックで…頭の中ぐちゃぐちゃ…」
俺からゆらりと体を離して目を泳がせていた
酒も、足のフラつきもそんなのとっくに吹き飛んでいて
じっと潤を見つめた
友達として一緒に居られれば…なんて
平穏だと勘違いして、ただ引き金がなかっただけ…
もっと早く気付いて言ってあげれば
こんなに混乱させることはなかったのだろうか
「…本当に…本当に…嘘でも冗談でも…
弄んでるわけでも…ないの?」
「そうだって、言ってるじゃん」
「…夢じゃないよね…?」
少し息を吐いてから
安心させるように優しく微笑んで潤の頬を摘まむ
「どう?」
「いはい…」
「夢じゃないだろ?
…てか俺の全身全霊の告白を夢にすんなよ」
「…ふふ」
「やっと笑った」
その顔が見たかった
指を離して片手全体を頬にそっとつけた
「…俺…あの時…
先は望まないって…両想いなんてなんなくていいって…思ってた」
「うん…」
「叶わないって…」
「うん…」
綺麗な涙を流して俺の手に潤の手が重なる
「…好き…」
「ありがとう……ね、前みたいに呼んで…」
「………翔、くん…」
「潤、好きだよ」
くしゃっと潤の顔が歪んだ
「…翔くん…翔…くん…う…」
時折嗚咽を交えながら何度も呼ばれて
それを愛しく顔を緩ませて聞いて
触れるだけの口付けをした
「……翔くん…」
「何…?」
「……欲張りに、なっても…いい…?」
「…うん」
「もっと…して」
「いいよ…」
それを皮切りに俺達はキスに没頭した
それだけで幸せだった
潤の止まらない涙が少ししょっぱくて
でも気持ちの詰まったキスはとても甘くて…
幸せな味がした