トクベツ、な想い
第9章 9
「潤…聞いて」
潤の肩がピクッと反応する
一呼吸置き、俺は口を開いた
「友達…やめてほしい…」
数分置いて潤から吐息が聞こえてくる
泣いてると思った
待ってくれ…今振り絞るから
なけなしの勇気を出すから
笑ってほしい
トクントクンと波打つ音が
頭の中の余計な思考をはらってその想いだけにする
バカだな…
今、分かった
"何か"の正体が
それは"潤の存在"だった
いつの間にか心に住み着いて俺を掴んでいたんだ
俺の心を揺らしていた
そこから潤を想う気持ちが生まれてた
思い出せばあの時もあの時も
潤のことで悲しくなったり嬉しくなったり
想いに気付かないながらも
いつの間にか潤でいっぱいになって…
今日遂に上限を超えて爆発したんだ
そういうことだった
頭と心がやっとシンクロした
世間体やみゆちゃんを枷にしてこの想いを告げることから逃げてた
俺も、自分ばっかだった
ぎゅうぅっと潤を抱き締める
ごめん
「……………好きだ……潤……」
長い沈黙ができて、やがて力ない声が放たれた
「…嘘は…やめてよ…」
まぁそうだよな、と分かりきった第一声に少し落ち込んだ
簡単に納得してもらえるなんて思ってない
潤の告白を聞いてからも友達として一緒にいたんだ、無理もない
でも…分かってほしい
「………こんな嘘…つくかよ
どんだけ勇気出したと思ってんだ…」
「だって、おかしい…なんで…やめてよ」
声だけでオロオロとしているのが分かる
「恋愛対象は…女の子でしょ…」
「それは潤もだろ…」
「…そうだけど…」
「…だからこそ、好きでもない相手に冗談で嘘で男に…キスすると思う?」
隙間なくついた潤の体から激しい鼓動が伝わる
俺も同じくらい上がっていた
でも気持ちは思ったよりなだらかで、冷静だった
「でも……待って…突然過ぎるよ、どうして…」
「…自覚し始めたのは潤から告白された時…かな
でもきっと、もっと前から…」
「そんなの…どう信じろっていうの…」