テキストサイズ

家政婦の水戸

第2章 長女、恵実と水戸さん

「水戸さんのを食べたら、お姉ちゃんが作ったのは、ただのミンチの塊に感じる。でも、デミグラスソースにさらにケチャップを加えたら、美味しいと思う」


 紗知は容赦ない。こいつは、本気で弱者である姉を叩きつぶす性分のようだ。


 たしかに、水戸さんのハンバーグは、なにもつけなくても美味しい。


 でも、俺はちゃんと、恵実のハンバーグも残さず食べるつもりだ。


「おい、紗知。ケチャップとウスターソース取ってくれ」


 恵実は、俺と水戸さんをギリッと睨んだあと、2階へ上がっていった。


 紗知は恵実の作ったハンバーグを残し「これ、明日食べよう。お腹いっぱいだもん」と言った。


 いや、あなたこれからアイスクリーム食べるでしょ。


 俺は一旦、箸を置いた。


「水戸さん、娘のわがままに付き合わせて申し訳ありません。気を悪くしないでください」


 それに対して、水戸さんは『ポシ'テ゚ィブ』と言った。


 紗知、頼む。


「水戸さんは、“私は勝負しているつもりはありませんでした。ただ、私の仕事を恵実お嬢様が手伝ってくださったのです。恵実お嬢様には、心より感謝いたしております”だって」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ