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家政婦の水戸

第3章 水戸さんのお留守番

 水戸さんは隙をついて、ナイフを奪おうとする。


 だが、基本的に動きが遅い。


 両手を前に出し、一歩ずつ膝を曲げずに近寄ってくる水戸さんに、男は戦慄を覚えた。


「うわぁーーっ!! やめろっ!!」


 男は抵抗のあまり、ナイフを水戸さんの腹に勢いよく突き刺した。


 ナイフで肉をえぐる感触が、手に伝わってきた。その瞬間、勝利を確信した。


「へ……へへ……くたばれ、化け物女が……」


 目線を上に向ける。


 水戸さんが、ジッとこちらを見ている。


「うぐっ!!」


 ハッキリしない黒目が、ジッと男を見据える。


 水戸さんの両腕は男の肩を掴んだ。


「ひっ……」


 男は身を竦める。


 水戸さんは口を開け、男の首もとにかじりついた。


「うぎゃぁゎーーーっ!!」


 ただし、肉に食らい付くのではなく、ソフト噛み噛みだ。


 それが水戸さんなりの、抵抗だった。


「うわ、うわ、うわ……は、は、離せっ!!」


 男は力任せに、水戸さんを突き倒す。


「お前、噛みちぎるのか、あま噛みするのか、わからんから、俺の心情の行方が迷ってもうとるやないかーーっ!!」



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