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家政婦の水戸

第3章 水戸さんのお留守番

「ひ……ひぃーっ!! こいつ、なにを言ってんだ? 近付いてくるな……刺すぞ……刺すぞっ!!」


 男は水戸さんがただ者ではないと感じ取ったのか、思わずナイフを突き付ける。


『に゙り゚つろ゚む'(やめて下さい。それは危ないですよ)』


 フラフラと手を前に出しながら、水戸さんは歩み寄る。


 男は、腰を押さえながら立ち上がり、後ろに下がる。 


「来るなっ!! それ以上近付いてみろ!!」


 そこから、男はなにも言えなくなった。どうやら、言い回しにつまずいたようだ。


 流れで言えば“こいつの命はないぞ!”だが、誰もいない。


 後に引けなくなった男は、こう言ってみた。


「いや、これ以上、近付いてみろ……俺の命はないぞ!!」


『!』


 自分が近付けば、この人は自殺する。


 死んでもらっては困る。自分はただの家政婦。この家の方に迷惑をかけてはいけない。


 水戸さんは、その場に立ち止まった。


 外からパトカーのサイレンが、けたたましく鳴り喚く。


「チッ!! ここまで警察が来たか……こうなったら、こいつを人質に……」と水戸さんを見た。


「やっぱ無理、無理、無理、無理」



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