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家政婦の水戸

第8章 ただいま水戸さん

 生水戸さんはフラフラしながら、キッチンの前に立つ。


 左右に体が揺れている。おそらくバイク水戸さんの平手打ちが流れた際、三半規管もやられたんではないかと……。


 そんなのおかまいなしに、生水戸さんは包丁を握る。


 今日は三人の水戸さんが料理をしてくれる。これは早いめに夕食ができるだろう。


 なぜか、三人とも豆腐を切りはじめた。


 いや、役割分担しろよ。


 一人は汁物こさえるとか、あるだろ。


 生水戸さんは手のひらに豆腐を置いて、包丁を下ろそうとしている。


 なぜだろう……生前のうちの嫁さんや、母さんも同じような状態で豆腐を切っていたが、水戸さんのやり方が恐ろしく感じる。


 なにかありそうな気がする。


 スパッといかないだろうか?


 いや……いま止めるべきだ。


 包丁の先が、手首をえぐっている。


 ダメだ!! なぜか知らんが、今日は水戸さんが痛々しい。


 メカ二人はまだいいが、水戸さんの場合、ダメージになる。


「ちょ、水戸さん、やめましょ……ちょっとゆっくりしてて下さい」


『ふぁ』


 アゴ、いかれてる……。



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