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桜 舞う

第2章 おまけ

課長、それ狡くないですか?
せっかく株上げたくて頑張ったのに、伝える前に酒々井の手を握るとか、全部持ってく気満々じゃないですか?
何で酒々井も嫌がんないの?

え……何、酒々井も、そういう事?

……マジか

長身の二人が並んで立つ姿はバランスが良く、違和感なく馴染んで見えた。

はあぁぁぁぁ……

内心で深くため息を吐く。
これ以上繋がれた手を見たくなくて、レジ袋に視線を落とした。

「平坂さん、ありがとうございます」

掛けられた声に頭を上げると、課長はすでに踵を返していて。
酒々井は振り返って俺を見てくれていた。
それだけの事が嬉しくてつい笑顔になる。左手を振ると酒々井が少し笑ってくれたように見えた。

あっという間に遠ざかっていく酒々井と課長。
その背中が見えなくなるまで見守って、今度は本当にはーっと長い息を吐いた。

あーあ、行っちゃった。せっかく頑張って仕事片づけたのに……

しかも、課長がライバルって……

ダメだ。全くもって勝てる気がしない。
ホント俺、頑張り損。
……
でも、まぁ酒々井を最後まで場所取りさせずに済んだのは良かった、かな……

寒空の下一人残されて桜を見上げる。俺はもう一度深く息を吐いた。

あー
せめて酒々井のカイロ、欲しかったなぁ……

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