
桜 舞う
第1章 桜 舞う
脇目も振らず堂々と、ずんずんこっちへ歩いてくる課長。その後ろを平坂さんはコンビニ袋を片手にちょっぴり小走りで付いて来る。
課長はバレーボールをしていたとかで、凄く大きい。平坂さんだって決して小さくはないのに、その身長差頭一つ分。
まるで王様と従者みたい。
二人で差し入れに来てくれたのかな?
……それにしても、あのコンビ目立つなぁ。
なんて、ぼんやり眺めていたら、あっという間に目の前に来られていた。
下から見上げるとますますデカイ。巨人、だ。
「酒々井、スマン。朝からお前ずっとここにいるって?」
「……は い」
入社した時から毎年ですけど、課長気付いてなかったんですね。一番下っ端だけど、私も課長の部下ですけど。今日も今まで不在を疑問に思って貰えなかったんでしょうか。
と言うか昨日、私の予定場所取りって書いて来たんだけど……
そもそも存在を気にされてない?
「平坂と変われ。お前は戻るぞ」
えっ?
良いの?
反射的に平坂さんを見上げると、バツの悪そうな顔をして視線を反らされた。
「ほら、立て」
大きな身体を折り畳むようにして手を差し延べられる。
良い、のかな……
こっちを見ない平坂さんが気になって、手を出せない。
動かない私に課長は何の前触れもなく深く屈むと、コートの上から両方の二の腕を掴んできた。そのままヒョーイと抱え上げられて。
うわっ!怖っ。
思わず硬直。課長はそっとその場に下ろしてくれた。
課長はバレーボールをしていたとかで、凄く大きい。平坂さんだって決して小さくはないのに、その身長差頭一つ分。
まるで王様と従者みたい。
二人で差し入れに来てくれたのかな?
……それにしても、あのコンビ目立つなぁ。
なんて、ぼんやり眺めていたら、あっという間に目の前に来られていた。
下から見上げるとますますデカイ。巨人、だ。
「酒々井、スマン。朝からお前ずっとここにいるって?」
「……は い」
入社した時から毎年ですけど、課長気付いてなかったんですね。一番下っ端だけど、私も課長の部下ですけど。今日も今まで不在を疑問に思って貰えなかったんでしょうか。
と言うか昨日、私の予定場所取りって書いて来たんだけど……
そもそも存在を気にされてない?
「平坂と変われ。お前は戻るぞ」
えっ?
良いの?
反射的に平坂さんを見上げると、バツの悪そうな顔をして視線を反らされた。
「ほら、立て」
大きな身体を折り畳むようにして手を差し延べられる。
良い、のかな……
こっちを見ない平坂さんが気になって、手を出せない。
動かない私に課長は何の前触れもなく深く屈むと、コートの上から両方の二の腕を掴んできた。そのままヒョーイと抱え上げられて。
うわっ!怖っ。
思わず硬直。課長はそっとその場に下ろしてくれた。
