テキストサイズ

4月は君のぬくもり

第2章 彼の秘密


次の日。
私は緊張しながら教室の前に立っていた。
去年はまだ担任を持たせてもらえなかったが、いきなり三年生とは…。

ふーーっ。
深呼吸をして…よし行くぞ。


ガラッと扉を開けて入ると、それまでざわざわしていた教室の中が一瞬静かになった。


ひきつりそうになる顔をおさえ、スマイルを心がける。そして私は黒板に自分の名前を書いた。


「今日から皆さんの担任になりました、堀江由衣です。どうぞよろしくお願いします」

「かーわいい♪」

「先生、彼氏はいるんですか?」

「どこに住んでるんですかー?今度僕、遊びに行きたいなー」

「えっ」

ドッと笑いがはじける。

「…」

さっそく飛び交う、思春期の子特有のヤジだった。
全体を見回すと男女半々。三年生ともなると、やはり大人びた生徒も多かった。


「彼氏はいません。住所は秘密です」

「お〜っ!オレ彼氏に立候補します!!」

手をあげて興奮する子。
あーあ、何素直に彼氏いないなんて言っちゃってるんだろ私。

「静かにして下さい。皆さんの顔と名前を覚えたいので、これから出席を取ります。大きな声で返事をして下さいね」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ