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神様の願い事

第7章 謎のオバケ

《sideS》



やっぱり今日の智くんは少し変だ。


昼間はぎこちなかったし、まさかまだ避けられてるのかと焦った。
だけどさっき出会った時には普通だったし。

手を引いて走って楽しくて、だけど家に招かれた途端、駄目だ駄目だと連呼した。

“温まらないと駄目だ”、“ニノを好きになっちゃ駄目だ”と俺に言い、なんだか少し怒っているような感じさえした。

なのに俺の髪を拭く智くんの手は優しくて。

かと思えば急に放置だ。
“ドライヤーを置いとくから勝手に乾かしておけ”と言い残し、俺にくるりと背を向けた。

どんな心境だというのか。





智「何って...、俺が映るよ。鏡だし」


そして今、その瞳は揺れている。


翔「...確かに、映ってるね...」


この鏡が繋がっているのだとしたら、俺の鏡と同じように俺の部屋が見えていたんじゃないかと思った。

だけど、俺の鏡は映っていない時は真っ黒なのに対し、この鏡は普通に部屋を映し出している。


翔「だけど他に、何かあるんじゃないの?」

智「え...」


何かを隠しているような、そんな気がした。


智「何もないよ。普通の、只の鏡だよ」

翔「本当?」


俺はいつの間にか智くんに詰め寄っていた。
何か隠してるんじゃないかと気になって、その瞳をしっかり覗こうと近付いていたんだ。


翔「本当なら、俺の目見て」

智「なんで...」

翔「逸らさなくても言えるでしょ? それとも、何か隠してるの?」

智「別に、何も隠してなんか」


距離を詰めて肩を掴むと、智くんは既に目を逸らしているにも関わらず、更に手の甲で口を覆った。


翔「...口元を隠すのって、秘密主義の人がするらしいよ?」

智「え?」

翔「無意識に隠してるんだよ。嘘を付いてるの」

智「そ、そんな事...」


漸く目は合ったけど背けた顔はそのままで、まだ口元も隠している。


翔「シャイな人にも多い仕草らしいけど、ね...」


智くんの心は読めない。
だっていつも隠してるから。


智「ち、近いから、恥ずかしいだけだよ...」


そう言ってまた目を逸らす。

その瞳は本当の事を言っているの?



ちゃんと見せてくれなきゃ、分からないんだよ。





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