
神様の願い事
第7章 謎のオバケ
ああ、もう駄目だ。早く追い出さなきゃ。
智「着替え取ってくるから、髪乾かしてて」
なんだってこんなドキドキするんだと思いきや、バスローブしか渡してなかった。
濡れた髪から落ちた雫が胸を伝って、俺のドキドキをさらに増幅させる。
智「ドライヤー、置いとくから」
翔「あ...、うん。悪いね」
もう見ていられなくて。
俺は逃げるように翔くんに背を向けたんだ。
翔「智くん」
クローゼットをガサゴソやってると、不意に背後から声が聞こえた。
翔「その鏡、どうしたの...?」
一人になって、漸く心臓も落ち着きかけていたのに。
その声の方を見ると、翔くんは開いた扉に寄りかかって俺を見ていた。
智「鏡?」
翔「それ。ベッドの前のデカイやつ」
顎で鏡を指すと、ゆっくりと俺のいる寝室に入ってきて。
智「ああ...、これは、買ったんだよ」
翔「いつ?」
智「いつって、なんで?」
鏡の前に立ち、マジマジと見ていると思ったらくるっと振り返って。
その鏡の前から部屋を見渡した。
翔「いや...、智くんがこんなアンティークなの珍しいなって思って...」
智「あ...、でしょ? 俺も、なんで買ったかわかんないんだよね」
翔「欲しかったんじゃないの?」
智「一目見た時はね」
なんであんな白いバスローブなんて渡してしまったんだ。
もっとちゃんと着ろよ。肌蹴た胸元を俺に見せるな。
翔「この鏡、丁度ベッドが映る位置なんだね…」
智「そうだね。てかそんなのいいからアッチ戻ってて? 着替え持って行くから」
翔「ねえこの鏡、何かおかしな事無かった?」
智「え?」
翔「この部屋に無いものが映るとか、無い...?」
智「は...?」
早く出て行けと催促をしているのに、俺の話なんて全く聞いちゃいない。
智「なにを言って...、てか本当出てって。ここ寒いから」
だから聞けって。
何をガチャガチャやってんだ。
翔「おっも...、やっぱビクともしない...」
智「そりゃ、大きいからね」
翔「そんなんじゃないよ。貼り付けたみたいに頑丈だよ?」
こんなベッドの前で、そんな瞳で俺を見るな。
翔「ね、何が映るの...?」
その瞳で何もかも見透かされているようで。
息をするのも忘れてしまいそうなんだ。
