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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第15章 池田悠と言う男(その2)。


 長い長い勤務時間を終え帰宅すると、二十二時を回っていた。あのAD部の新人の女の子に、メールをすると約束していたので、遅い夕飯を取りながらメールを送る。「約束」と言っても、一方的にこちらがメールをすると伝えただけなのだが。

 彼女は俺のメールを待っていたのだろうか。返信は直ぐに来た。

 どんな風に待っていたのかを想像してみる。ベッドの上に置かれたスマートフォン。そしてその前に正座をしている彼女の姿が想い浮かび、思わず笑みが込み上がる。

 まさか、漫画じゃあるまいし。

 でも、彼女ならそう言う行動もあり得そうだ。半日程、彼女の半生を聞いたが、恐らく、彼女がああなってしまったのには、親にも原因がある。

 愛するが故に、彼女に害を与えそうな物は全て排除していたのだろう。思春期を過ぎた女性なら、知っていそうな事も、彼女は知らなかった。

 行動範囲の狭い、子供の内ならそれでも良かっただろうが、人はいつかは大人になり、社会に出ていくのだ。その時に知らない事が多くて苦労するのは、子供なのである。

 彼女の両親は、彼女が就職活動をする事に反対していたそうだ。人とコミュニケーションを取れない彼女が社会に出て苦労する事はないと。

 自分達が面倒を見てやるから、お前は家に居て、家の手伝いをしていればいいと。

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