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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第15章 池田悠と言う男(その2)。


 しかし、彼女は分かっていた。両親がいつまでも健在でいるわけではないと。彼女は、両親が40近くなって生まれた子なのだそうだ。

 何度かの流産。そして不妊。諦めかけていた時に彼女が宿った。だから、大切にしたい気持ちは理解出来る。手放したくない程、愛しい気持ちもあるのだろう。

 子供を狙った犯罪も多い昨今、犯罪者に目を付けられない様にと、なるべく可愛い恰好をさせなかったのも、理解は出来る。

 瓶底眼鏡を外した彼女は、パッチリとした二重瞼に、長い睫毛で可愛らしい顔をしていた。きちんと身なりを整えれば、誰にも馬鹿にされない容姿をしていたのだ。

 けれど、今までそう言った物を排除されて来た彼女は、自分の姿を飾る事に興味を持っていなかった。自分の姿を醜いと思い込み、周りに怯えていた。それは非常に勿体ない事だと思う。

 何も知らない純真無垢で、しかも容姿も標準レベル以上の女の子が現れたら、そりゃあ男なら、少しはちょっかいを出してみたくなると言うものだ。

 AD部の連中は、見た目の良い男達と言う事もあり、社内でも彼等に興味を持っている女子社員は多いと噂に聞く。扱っている商品も商品であるから、彼等に群がる女性は、どちらかと言えば肉食系が殆どだろう。

 だから、彼女みたいなタイプは新鮮なのだ。演技をする事すら知らない彼女の反応が。それでつい構いたくなってしまうのだろう。俺ですらそう思ってしまうのだから。

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