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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第18章 平川拓斗という男(その2)。


 AD部での新入社員を歓迎する花見の後、僕は坂内部長から頂いたタクシーチケットを使い森脇さんを自宅まで送った。

 以外にも彼女の家は、僕が利用している駅の沿線上にあった。ひょっとして坂内部長はそれを知っていたから、僕に彼女を送るように言ったのかも知れない。

 月曜日。いつもよりも早目に家を出て、森脇さんの利用する駅で降りる。彼女の出社してくる時間から、駅に着くであろう時間を計算して。

 改札の傍の柱に凭れながら、行き交う人の中から、森脇さんを探す。すると直ぐに彼女を見つける事が出来た。

 森脇さんは、鞄の中から定期を出そうとゴソゴソと漁っている。彼女が鞄の中に気を取られている間に、こっそり後ろから近付き、「おはよう」と声を掛けてみた。

「きゃっ!!」

 吃驚した彼女は、首を竦めて鞄を放り出す。中身が床に散らばる。驚かしたのは失敗だったかな。僕は慌てて彼女の鞄の中身を彼女と一緒に拾い集めた。

「急に声を掛けてごめんね?」

 そう言って、彼女に拾った物を渡すと、森脇さんは吃驚して、大きな目を更に大きく見開いた。

「平川さん……? どうして……?」


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