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第18章 平川拓斗という男(その2)。


「僕の住んでる所、ここの三つ先の駅なんだ。折角、付き合う事になったんだし……、お迎え?」

「でも……、それは"振り"なんじゃ……?」

「そうだけど、一緒に出社をした方が、より"付き合ってる感"が出るんじゃない? 嘘っぽいと、ヤマに信じさせて意識させる事なんて出来ないよ?」

「それは……、そうかも知れませんけど……」

「いいから、行くよ?」

 僕はそう言うと、彼女の鞄を奪い手を取って歩き出す。半ば僕に引き摺られる様に歩き出す森脇さん。

「それにね。朝の電車は混んでいるでしょう? たまちゃんが変な男に痴漢をされないとも限らないからね。ボディ・ガードだよ」

 そう言って笑うと、彼女は顔を赤く染めて、「アタシなんかに痴漢をする人なんていません」と俯きながら否定した。

「そんな事はないと思うよ? つい僕達が攻め過ぎてしまうのは、たまちゃんが男をその気にさせる魅力があるからだと思うな」

 改札を抜け、階段を昇りながら周りを見ると、彼女の後ろを歩いている男が、森脇さんの細い足首に魅入っている。

 僕は森脇さんの手を引き、僕より前を歩く様に促すと、その男は小さく舌打ちをした。残念だけど、君には見せてあげない。たまちゃんは僕達のモノだからね。

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