テキストサイズ

おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第20章 アタシのお仕事とパートナー。


 でも、アタシだってどうかしている。山岡さんの事を好きなのに、平川さんにキスされて嫌じゃなかったなんて。下出の時は、あんなに嫌だったのに。

 平川さんの顔を見ながらそんな事を考えていると、アタシの視線に気付いた平川さんがこちらを見て「そんなに見つめられると恥ずかしいよ」と言ってはにかむ。そんなの絶対嘘だ。平川さんみたいに綺麗な男の人は、絶対に視線になんて慣れてる筈だもの。アタシがそう言うと、平川さんは「知らない人に見つめられるのと、知っている人に見つめられるのとでは全然違うよ」と答えた。

 どう違うんだろう。アタシなんて、人様から向けられる視線が痛くて堪らないのに。そう返すと、平川さんは「AD部の皆の視線も、未だ痛い?」と尋ねてきた。アタシはその問いに、ちょっと考える。どうだろう。そう言えば痛くないかも。そう答えると、平川さんは笑って「きっと慣れたからだよ」と言った。そして「少しずつ、色んな事に慣れていこうね」と言って、アタシの額に唇を寄せた。

 チュッと言う音を立てて、離れる唇。一体どう言うつもりなんだろう。平川さんにとっては、他愛もないスキンシップなのかも知れないけれど、アタシにとっては、結構一大事なのに。でも、それが嫌だと感じないから困る。本当にアタシはどうしてしまったんだろう。これも「慣れ」なの?

 自分の気持ちに戸惑っていると、平川さんがマグカップをサイドテーブルに置き、「そろそろ次のテストをはじめるよ」と言って、着ぐるみの手を装着した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ