おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第22章 川上達哉という男(その2)。
ヤマの事がなければ、応援してあげたいところだけれど。王子だって今まで恋愛に恵まれてきたワケじゃない事を知っているから。けれど、王子の場合はそれで人を好きになるのを止めるワケではない。ヤマよりは重症じゃない。だから出来ればヤマに譲ってやって欲しい。
しかし、恐るべきはモリーだよ。この王子にネコ耳を着けさせるとは。それだけ王子がモリーの事を好きになったと言う事なんだろうなぁ。これは、俺の方でヤマを早くその気にさせないと駄目かも。
「カワ? やっぱり、駄目……だよね?」
「俺がどうこう言う権利はないけど……。それよりさぁ、服……着たら?」
俺は全裸の王子を頭の先から爪先まで見てそう言った。仕事で何度も見てるけどさ。悔しい程にバランスのいい身体つき。ここで働いているよりも、モデルかなんかになった方が良かったんじゃないのかと思う。
「酷いなぁ。ここに引っ張って来たのカワじゃない?」
そう言って苦笑する王子。モリーはどっちとくっついたら、幸せになれるんだろうか。それとも、他の男が幸せにするのかな?
「そうだったっけぇ? まあ、早く服を着てきなよ。もう、そろそろ昼だよ? 早く社食に行こうよ」
「ああ、ゴメン。今日からシモ達と三人で行ってくれる? たまちゃん、お弁当だから……。僕もそうしようかと思って……」
やばい。そこまですると言う事は、王子はかなり本気モードって事だ。そんな急に気持ちって育つものなの? モリー……。本当に怖い子だねぇ。これは、のんびり構えていられないかもなぁ。
この時の俺は、モリーの恋のお相手どうこうよりも、ヤマの事ばかりを気に掛けていた。その俺が、親友であるヤマを差し置いて、モリーの事を想う日がくるなんて、思ってもいなかったのだった。