おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第24章 甘美な治療。
池田先生は暫く車を走らせると、あるお店の前で停まった。「ちょっと待っていて下さいね」と言って車から降りると、そのお店の中に入って行く。数分後、先生は袋を携え戻ってくると、それを後部座席に置き、再び車を走らせた。そして、どこかの地下駐車場に車を停めると、助手席に回り扉を開けてくれ、アタシに降りる様促した。
駐車スペースの先に扉があり、その扉の鍵を開ける池田先生。振り返って「どうぞ」と言われ、中へ入るとそこは物置部屋。「えっ!?」と思っていると先生が奥に進むので、その後について行く。すると奥には螺旋階段があった。先生がそれを上って行くから、アタシもそれに続いて上った。階段を上がり切るとそこはどうやら玄関らしかった。先生はそれが習慣化されているのか、玄関に設えてある飾り棚に鍵をポンと置くと、靴を脱いでスリッパに履き替える。そして、アタシの分のスリッパを揃えて置くと、「上がって下さい」と言って微笑んだ。
「えっと……、ここは?」
アタシがスリッパに履き替えながら尋ねると、先生は自宅だと答える。
「いきなり連れて来てしまってすみません。落ち着いた場所で思い浮かぶのが自分の家しかなかったものですから……」
そう言いながら奥へ進むと、天井の高いリビングに通された。かなり広い。ご家族と住んでいるのだろうか。それにしては他の人の気配がない。
「ここには私一人で住んでいます。流石に実家に貴女をお招きするのは早過ぎるでしょ?」
先生は笑いながらそう言うと、ソファに座るよう勧めてくれた。黒い革張りのソファと硝子テーブル。家電量販店でしか見た事のない、大きな画面のテレビ。それしかない殺風景なリビング。けれど、大きな窓からは、ライトアップされた庭が臨め、それがまるで一枚の絵の様で寒々しさはあまり感じなかった。