おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第25章 良薬、口に苦し。
「薬を投与」なんて言ったけれど、詰まる所、森脇さんに口でして貰いたいだけ。彼女の身体を拓くには、まだ彼女の気持ちが固まっていないから無理には出来ない。しかし、彼女は俺に対して「お返しがしたい」と言ってくれている。その言葉に素直に甘えるのは癪だから、そんな言い方をしてしまった。それに「治療」としての行為であれば、彼女は素直に受け入れてくれるだろう、なんて狡い考えもある。
多分彼女だってもう、これが治療でない事は分かっている筈だ。けれども治療と言う事にしておかないと、彼女の心は壊れてしまうかも知れない。彼女が見ているのは他の男なのだから。だからと言って、簡単に身を引くなんて事は考えてはいない。彼女に対する想いが恋愛感情なのかは、未だ自分でもハッキリしない所ではあるが、彼女を傍に置いておきたい、彼女と触れ合いたいと言う気持ちだけは自覚している。
それにしても、平川君は馬鹿な事をした。若いが故の焦りだったのだろう。あんな事をしなければ、彼の様な男が傍に寄り添ってくれていたら、森脇さんだって心を傾けたかも知れないのに。しかし、そうなったら困るのは俺だから、彼には感謝せずにはいられない。彼のお陰で自分のテリトリーへ彼女を招き入れる事が出来たのだから。
出来る事なら、朝まで彼女と戯れ癒されたい所であるが、まだ、週が明けたばかりだから、日付の変わらない内に自宅まで送り届けようと思う。それに、医者として信頼をされているご両親を裏切るワケにもいかない。こう言う事は外堀を埋めていく事も大事だ。そんな事を考えている自分に笑ってしまう。これではまるで、結婚を前提に彼女との交際を考えているみたいではないか。まだ、出会ったばかりであると言うのに。