おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第25章 良薬、口に苦し。
「アタシ、少しずつですけど強くなってきた気がします。先生やAD部の皆さんが親切にして下さるから……。少しは他人を信用してもいいのかなって」
「ははは……。それはちょっと危険ですよ?」
「え? どうしてですか?」
「男が女性に親切な時は、下心がある事の方が多いからですよ」
「じゃあ、先生もそうなんですか?」
「ここで「あります」って言ったらどうします?」
「え?」
「私の様なオジサンが貴女の様な若い女性に、下心があるなんて言ったら引いてしまいますか?」
彼女の家の近くまで辿り着き、車を停めると俺は彼女の方を向いて尋ねる。これで引かれたら、仕方が無い。でも、彼女は俺を受け入れてくれているのではないかと言う確信めいたものがある。それが医者と言う立場の俺であっても。案の定、俺の質問に彼女は首を横に振った。
「アタシ……、池田先生を信じてますから」
真っ直ぐな瞳で俺を見つめながら、森脇さんはそう言った。参った。これじゃあ、下手に手は出せないじゃないか。けれど、「信じている」と言う彼女の言葉は、俺の心を擽る。彼女が身体を預けてくれるのは、今は医者としての俺を信頼しての事かも知れない。今はそれでもいい。いつかは男として彼女に求められるようにしてみせよう。
俺は彼女のご両親に挨拶をし、家の中へ消えて行く彼女の後姿を見送りながら、そう思ったのだった。