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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第25章 良薬、口に苦し。


 彼女の家へと向かう車の中で、これからどうすればいいのかと相談される。注目を集める平川君の相手と言う事で、好奇の目を集めてしまうだろう。俺は正面玄関からではなく、裏口から出勤する事を勧めた。俺みたいな非常勤の者や、食堂員、清掃員、警備員等は裏口を利用している。身分証明書と部署を記入すれば、通してくれるのだ。俺の提案に彼女は「そうします」と頷く。あと、問題は平川君の事だ。

 俺は平川君の事は許せるかと尋ねたら、彼女は暫く考えた後、首を横に振った。でも、申し訳ない気持ちもあるのだと言う。彼は自分の為に協力してくれていたに過ぎないのだからと。俺はそれだけではないだろうと分かっていたが、彼女がそう思っているのだから、そうしておこうと思った。森脇さんが平川君の気持ちを知る事で、彼を意識して貰っては困る。それに、彼が自分で言わないのに、俺が彼の気持ちを彼女に話してしまうのも違うと思うからだ。

 彼女は最後まで平川君に対してどう接していいか分からない様だったが、俺は会ってその時に判断すればいいと伝えた。彼女は被害者だ。顔を合わせて罵っても、無視をしても、彼は何も言えない。言う権利はない。

「唯……、もし困った事があれば、何でも相談して下さい。私はいつでも貴女の味方ですからね?」

 俺はそう言って助手席の彼女の手を握る。いつも傍についていられないのが辛い。何かが起こっても、駆けつけてやる事も出来ない。それが心苦しい。けれど、そんな俺に彼女は笑って大丈夫だと言う。

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