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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第27章 アタシの気持ち(その1)。


 アタシは会社の最寄り駅へ着くと、平川さんとは別れて会社を目指す。裏口へ回ると、出入り口を入って直ぐの警備室前で社員証を見せて記帳する。チラっと警備室の中を覗くと、沢山のモニターが並べられ、年配の男性がモニターを確認し、もう一人の人が外部から入ってきた人のチェックをしている様だった。受け付けをしてくれた若い男性は、アタシの名前を見ると「あれ?」と言う様な顔をする。

「……? アタシの名前に何か?」

 そう尋ねると、警備員さんからは、何でもないとの答えが返ってくる。

「んじゃ、照会しますんで、ちょっと待ってて下さい」

 若い警備員さんは、ぶっきらぼうにそう言うと、パソコンにアタシの名前と社員番号を入力した。暫くして照会が終わったのか、"ピロロロロン"という音と共に、画面にアタシの顔写真と名前、入社年、部署名等が表示された。

「アンタ、本当に"森脇 珠子"か?」

「そうですけど……?」

「顔が違くね?」

 若い警備員さんは、モニターの写真とアタシの顔を何度も見比べてそう言った。モニターに映し出されている写真は、入社式が始まる前に撮影したもので、化粧も何もしていない、ぼんやりして野暮ったい珠子の顔だった。そして、今のアタシは、下手なりにも化粧を施し、垢抜けてはいないけれど、目元パッチリの珠子だ。そりゃあ、別人だと言われても仕方が無いよね。

(どうしよう。入れないのかな……)

 アタシが不安そうな顔をしていると、警備員さんは奥で監視カメラのモニターチェックをしている男性に声を掛ける。

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