おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第28章 坂内龍弥という男(その2)。
新入社員が入社してきて、そろそろ一カ月が経とうとしてる。下出君は性格には少し問題はあるが、即戦力として申し分ない。AD部は扱っている商品と仕事内容のせいか、定着率が物凄く悪い。新入社員じゃ無理だろうと言う事で、AD部が発足してから去年までは社内の他部署から移動してきた社員を使っていたが、結局、残っているのは今の面子だ。その内の山川コンビはAD部に入る為に中途採用で入って来た。高槻や平川は他部署から移動して来た組だ。平川は分かるが、高槻は一体どんな顔をして子供向きの玩具のデザインをしていたのだろうか。
それが、去年の面接時に面白い男がやってきた。下出君だ。自己アピールの限られた時間で、大人のオモチャのプレゼンをし、同じグループの学生達をドン引きさせていた。ウチの役員は遊び心のある変わった人間が多く、最終の個人面接前には、彼の採用が決まっていた。
そして、もう一人変わった人材が森脇さんだ。筆記試験では、一般常識以外は全て満点。そして絵が上手かった。ウチの試験は、最終問題に入社後に作りたい玩具と題した絵を描かせる。これは学生には、配点は一点しかないと予め伝えてある為、殆どの者は白紙で提出してくる。絵を描く事に時間を割くよりは、一問でも多く回答のミスを失くす為の見直しに時間を割いた方が点数が稼げるからだ。それなのに、森脇さんは全ての解答欄を埋め、絵まで丁寧に描いて提出してきた。それで、面接へと彼女は進んで来たのだ。