おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第28章 坂内龍弥という男(その2)。
そう言えば山川コンビを森脇さんの研修担当にしたが、あの二人はどうなんだろうか。ヤマの方は元々、妹さんがいるから面戸見がいいのは知っていたが、カワが何だかんだ言ってきちんと面倒を見ている事に、僕は驚いている。本来、彼は快楽主義者で、面白そうな事に首は突っ込むが、そうでない物には、全くの無関心。それが、どう言うワケか彼女の相談相手になっているらしい。そう言った意味で、森脇さんは確実にAD部に変化を齎(もたら)していると思う。
流石は僕が見込んだ子だ。普段は色気は感じないのだが、時折見せる艶っぽさ。くるくる変わる表情は見ていて飽きない。彼女は言葉で表現するのが苦手な分、顔の表情に気持ちがよく現れている。直ぐに落ち込んでしまったり、そうかと思うとパッと輝くような笑顔を見せたり、揶揄われて驚いたり。男に媚たりしないところもいい所だ。
このままAD部に馴染んで、ずっと働いてくれると有難い。そして立派な社会人として成長してくれたら嬉しい。
部下達が帰った後の誰もいない事務所で、彼等の新しい企画に目を通しながら、僕はそんな事を思ったのだった。