おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第32章 肩透かしの夜。
森脇さんと店を出ると、タクシーを捕まえてホテルへ向かう。車内では、お互いに終始無言。だが、繋いだ手がお互いの温もりを伝え合っていた。勢いで誘ってみたものの、まさかついて来るとは思わなかった。彼女はどこまで覚悟しているのだろうか。
年甲斐にもなく、心臓がドキドキと高鳴っている。こんな気持ちになるのは、何年振りだろう。
タクシーがエントランスに到着すると、彼女を先に降ろし代金を支払う。息子には「遅くなる」とメールを送ったが、何の返信もない。あいつはあいつで好きにやっているのだろう。普段、僕の方が早く帰宅しているから、僕がいると出来ない事をしているのかも知れない。
フロントでチェック・インを済ませ、鍵を受け取る。「行こうか」と彼女の背中に手を回すと、弾かれた様に顔を上げる森脇さんの目は潤み融けていた。その顔に欲情する。
エレベーターに乗り込み、扉が閉まると同時に、彼女を抱き竦め口付ける。彼女の手が僕の背中に回り、覚悟を決めたかの様にジャケットを握り締める。彼女の口内に舌を忍び込ませ、彼女の舌に絡めると、拙いながらも必死に応えようとする森脇さんが、可愛くて仕方が無い。