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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第5章 平川拓斗という男(その1)。


 平川さんは「もう少し楽しんでいたかったのに、残念」と言いつつも、アタシの上から身を起こすと、ベッドから降り、備品庫の方へと行ってしまう。

(え? どういう事?)

 今までの甘い雰囲気から一転して、何事もなかったかの様に、行ってしまった平川さんに唖然とするアタシ。それを申し訳なさそうに、川上さんが説明してくれる。

「期待を持たせちゃったら、ごめんねぇ。コレからサンプルの検査をするんだよ。その為には、君も俺達もその気にならないと駄目だからさぁ……」

 ああ、そうか。今は業務時間内で……。アタシ達の仕事は、エッチなオモチャを作る事で……。だからそれを試すには、エッチな気分にならなくちゃいけないワケで……。

 不慣れなアタシの為に、平川さんは好きでもないアタシに優しくしてくれたワケで……。「可愛い」と言ってくれたのも、その気にさせる為で……。

 頭では分かってはいるのだけれど、心が追い付かない。気が付けばアタシの目からは、ポタポタと大量の雫が零れ落ちていた。

「わわっ!! 森脇さん!」

 アタシの涙を見て動揺する川上さん。山岡さんは、アタシの頭を抱きかかえ、「ごめんなぁ」と言って何度も撫でてくれる。

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