おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第1章 ぷろろーぐ。
「平川さん、"AD部"って裏部門ですよね?」
同期のイケメン君が平川さんに質問を投げかける。平川さんは、イケメン君の質問に、「よく知ってるね」と言って笑う。
「その裏部門に、こんな経験なさそうな女で務まるんですか?」
イケメン君はそう言うと、チラッと振り返ってアタシを見た。彼の言葉にアタシのガラスで出来たハートは今にも壊れそうだった。
確かにアルバイトをした経験もないけれど、そんな人は他にも居るだろうと思う。それに務まると見てくれたから、配属されたんじゃないのかと思ったが、アタシは黙って彼等の会話を聞いていた。
「下出(シモイデ)君、物は考えようだよ? 経験ない子も夢中になれる"オモチャ"を作る。それが、今期の課題なんじゃないかと僕は思うんだよね」
平川さんが優しく諭すようにそう言うと、イケメン君……もとい下出君は「なるほど」と頷く。そして彼は「でも、想像したくないな」と付け加えた。
(アタシだって玩具で遊ぶ姿をアンタに想像されたくない! って言うか玩具で遊ぶ年齢は過ぎてるし!!)
心の中で下出君の尻に蹴りを喰らわせながら、そう思っていると、平川さんが扉の前で立ち止まり、ニッコリと笑って「着いたよ」と言った。