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おもちゃのCHU-CHU-CHU★

第45章 絡まる糸(その1)。


 一緒に過ごせなかった週末が過ぎた月曜日の朝。駅のホームで待っていた平川さんがアタシの顔を見て、「元気がないね。ヤマと喧嘩でもした?」と尋ねてくる。喧嘩をしたワケじゃないから首を横に振ると、平川さんはアタシの顔をジッと見つめて、「じゃあ、どうしたの?」と更に訊いて来る。ちょっと疲れているだけだと言うと、平川さんはそれ以上は何も訊いて来なかった。

 アタシと平川さんは電車に乗り込み、次の駅で乗車してきた山岡さんと落ち合う。山岡さんは、アタシの顔を見るなり、「一昨日はゴメンな?」と謝って来た。アタシは首を横に振り、妹さんは帰ったのかと尋ねると、山岡さんが頷く。平川さんは、アタシ達の会話には、口を挟まず、黙って窓の外を見ている。

 相変わらず、平川さんはアタシの事を好きだとは言うけれど、山岡さんの前では言わないし、アピールもしない。唯、時々だけれど、不意に山岡さんから見えない方の手を握られる事はある。それが、何だかいけない事をしているみたいで、罪悪感が沸き上がるのと同時に、ドキドキしてしまう。嫌なら振りほどけばいいのに、それをしないアタシは「狡い」と自分でも思う。

 会社の最寄り駅に到着し、ホームで二人と別れると、アタシはいつもの様に裏口から入る。すると、池田先生が出勤日だったのか、入口で声を掛けられた。挨拶を交わし、顔色が悪いようだけれど体調は大丈夫かと尋ねられる。アタシは、昨夜遅くまで本を読んでいたからだと言うと、先生は目を細めて、「それじゃあ、医務室に来なさい。AD部には、私が内線を入れておきます」と言って、アタシの腕を掴んで歩き出した。


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