おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第8章 池田悠と言う男(その1)。
結局、医務室の先生が、アタシの服を持って戻って来てしまい、坂内部長とは何も起こらなかった。それにホッとする自分もいるし、残念に思う自分もいる。「残念に思う」ってアタシは坂内部長に何を期待していたのだろう。
他人に期待をして、裏切られて傷付くのは自分だ。そんな目には会いたくない。どんなに坂内部長が優しい人でも、腹の中で何を考えているのかなんて、分からないのだから。だから、何もなくて良かったんだ。そう自分に言い聞かせる。
アタシが着替えるので部長は、「廊下で待っている」と言って医務室を出ていった。アタシは、カーテンを閉め、先生が持って来てくれた紙袋を開ける。先ずは下着を身に付けようと取り出したのだが……
「何これ……?」
中に入っていたのは、アタシが家から身に付けてきた、何の飾り気もない下着ではなく、綺麗なレースとリボンがあしらわれた、お揃いのブラジャーとショーツだった。
「先生! これ……、アタシのと違うんですけど……」
カーテンから顔だけを出し、デスクに座って書き物をしている先生に訴えると、先生から「それは貴女のですよ」と返ってくる。
「少なくとも、私はそう伺っております」