おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第46章 訪問者、再び。
アタシがガックリと肩を落としていると、山岡さんは「嫌なら町田のおばあちゃんの所へ行け」と、小百合ちゃんに言い放つ。山岡さんのこの言葉に、小百合ちゃんには悪いと思ったけれど、嬉しくなった。アタシの事を選んでくれたんだって。それだけアタシの事を想ってくれているんだって。
だけど……。小百合ちゃんの鳴き声が聞こえてくると、その気持ちは萎んでしまった。未だ、幼い小百合ちゃんを泣かせているのに、喜ぶだなんて。アタシって嫌な人間だ。
(やっぱり……。帰ろう……)
アタシはそう思って荷物を纏めると、リビングに出て山岡さんに頭を下げる。「お邪魔しました。帰ります」と言って。そのまま玄関に向かい、パンプスを足に引っ掛けると、山岡さんの部屋を飛び出す。
山岡さんは追い掛けて来てくれたけれど。正直なところ、アタシを嫌っている人に対して、どう接していいのか分からないから、戻る気にはなれなくて。山岡さんは、お母様のところに小百合ちゃんを連れていくからと言ってくれたけれど。お母様だって看病やら色々と忙しくて、小百合ちゃんの事を構ってあげられないだろう。それを思うと、山岡さんが小百合ちゃんを預かるのが、一番良い様な気がするし。そうなれば邪魔なのはアタシだ。
「いっちゃん。いつまで続くかは分からないけど、おばあ様の具合が良くなるまで、暫くは週末のお泊り、止めよう?」
気が付けば、アタシはそんな事を口走っていた。