おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第8章 池田悠と言う男(その1)。
「たまたま、出勤してアタシみたいな変な女子が運ばれてきて、長々と話を聞かされて、今日は先生は厄日ですね」と言ったら、池田先生は「出勤して良かったですよ」と言った。自分の力で誰かを救えるのが先生の喜びなのだそうだ。
全てを話してしまった安心感なのだろうか。池田先生とは、あまり緊張せずに話せた。先生は、AD部の事も、知り得る限りの事を教えてくれた。
「皆さん、格好いい方ばかりでしょう? だから、AD部に配属されたがる女子社員は多いんですよ。だから、気を付けて下さいね。妬まれたりするかもしれませんから……」
池田先生は、心配そうに目を細めてアタシを見る。そして、「一人で苦しまない様に」と言ってくれた。その言葉だけでも、救われる。
頼り過ぎてはいけないけれど、見守ってくれる人がいるのは、勇気が出る。つい数時間前までは、会社を辞めようと思っていたのに、すっかりアタシは続けてみる気になっていた。
坂内部長、そして池田先生がここまでアタシの事を考えてくれているのだから。それを支えに頑張ってみようと思う。
アタシが決意を池田先生に話すと、先生は微笑んで「頑張って下さいね」と言ってくれた。