おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第8章 池田悠と言う男(その1)。
「高槻室長が、女の子にここまでするのは珍しい事なんですよ。相当、気に入られたみたいですね」
診察を終えたアタシを車に乗せると、先生はそう言って笑う。気に入られる要素が見当たらないアタシは、先生の言葉を信じられない。
「他人を信じられない気持ちは、お話を聞いて分かっていますが、私の事は信用して、話して下さったんでしょう? でしたら、私の言う事は信じて下さいね?」
そう言われてしまうと、アタシは頷くしかない。何せ、洗いざらい話してしまったのだから。エッチな事をされた事も。気持ち良過ぎておかしくなりそうだった事も。全て。
先生は、「働く上で心配な事や、悩みがあったら、いつでも聞く」と言って、携帯の番号が書かれた名刺をくれた。先生の名前は「池田 悠(イケダ ユウ)」と言うらしい。そして、池田先生は、電話で話すのが、苦痛であればメッセージでも構わないからと、言ってくれた。
「お医者さんって大変ですね。アタシみたいな新入社員のケアまでしなくちゃならなくて」と言うと、先生は笑って「でも、毎日勤務しているワケではないからね」と言いながらハンドルを切る。
先生は普段、大学病院で働いているのだそうだ。あの会社へは、知り合いに頼まれて、月に二、三回来ているのだと言う。