おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第51章 【番外編】真夏の出来事(その2)。
「ヤバイな。近くまで来てるみたいだ……」
洞窟の入口を警戒する様にじっと見つめながら、山岡さんが呟く。
「ここは昨日までは塞がっていた場所だから、まだ気付かれてはいないと思いたいけど……。見つかったらアウトだね。海側に抜けるには、潜っていかないと無理だし……」
そう言って平川さんが視線を足元に落とす。平川さんの視線を辿ると、壁の下には水が溜まっていて、壁の向こう側に繋がっている様だった。
「昨日まで塞がっていたのに、どうしてここが開いている事を知ってたんですか?」
「話せば長くなるから、それは後にしよう。先ずはここが見つからない様にしないと……」
「それなら、僕が囮になるよ。ヤマは引き続きたまちゃんを守って」
そう言うと平川さんは立ち上がり、入口の方へと歩き出す。アタシはそれに釣られる様に立ち上がると、平川さんの後を追い掛けた。
「えっ!? それじゃあ、平川さんは?」
平川さんの横に並び顔を見上げて尋ねると、平川さんは立ち止まり、アタシに笑顔を向けてくれる。
「大丈夫。多分、カワや高槻さんのターゲットはたまちゃんだ。見つかったらやられるから、やり返すくらいはするだろうけど、深追いはして来ない筈。だから、僕が追い立てる。まあ、カワが相手だと仕留めるまで追い掛けられるかも知れないけど。それならそれで都合がいいよ」
「でも……でも……」
アタシはおろおろしながら、平川さんと山岡さんの顔を見比べる。山岡さんはアタシが歩き始めた後、追従する様に後をついて来ており、黙ってアタシ達の会話を聞いていた。
「別に負けても、大した事じゃないからね。せいぜい、罰ゲームを喰らうくらいだし。たまちゃんを守っての殉死なら名誉な事だよ」
「おおぅ……。流石、王子。カッコいいねっ!」
「やだなぁ。茶化さないでよ。自分だってそうだろ?」
「まあ、ね?」
「じゃあ、後は宜しく頼むよ?」
「ああ、任された」
二人はそう言うと拳を合わせ、ニッと笑う。そして平川さんは、入口付近の壁に背中を預けながら、外の様子を伺った。山岡さんに目で合図を送り、頷き合う平川さん。山岡さんって川上さんと仲が良いけれど。平川さんとも結構仲が良かったんだな。
平川さんは足音が近付いて来ると、光の中へ身を躍らせて行った。