おもちゃのCHU-CHU-CHU★
第11章 試着室の中で。
山岡さんに連れられて来たのは、よくあるセレクト・ショップだった。とは言っても、アタシはこう言うお店に入るのは初めてで、緊張のあまり不審者の様に、辺りをキョロキョロと見回してしまう。
「あ~! ヤマちゃん! 久し振りじゃない!!」
そう言って、すっごく綺麗な女性が、山岡さんに声を掛けてきた。
「おー! 店長、久し振りーっす!」
山岡さんも笑顔で、その女性とハイタッチなんかをしている。随分と仲が良ろしい様で。「久し振り」と言っているから、ひょっとしたら昔の彼女なのかも知れない。
店長と呼ばれた女性は、アタシに気付くとニッコリ笑って、「こちらの可愛い人は?」と、山岡さんに尋ねる。山岡さんは、アタシを店長さんに紹介し、アタシに合う洋服を見繕ってくれる様に頼んだ。
店長さんは快諾し、アタシを店の奥へと誘(いざな)う。アタシは黙って彼女に付いて行くが、不安で仕方が無い。
男の人の前では、愛想が良くて優しいけれど、いざ、二人きりなると、アタシに冷たく当たる人に何人も会ってきたから。
店の奥へと歩きながら、店長さんは、吊るしてある洋服をささっと選ぶ。それが余りにも早くて、適当に選んでいるんじゃないかと疑ってしまう。