逢いたいから~恋とも呼べない恋の話~
第3章 雨降りの向こう側には
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時は流れてゆく。むろん、私と彼の世界が交わることは二度となかった。私はあれ以来、樋口写真館の前を何度となく通り過ぎたが、自分から訪ねようとしたことはなかったし、彼―祐一郎さんと偶然でも出くわすことはなかった。
それでも、私は、もう悩まない。たとえ恋とは呼べないものだとしても、彼との出逢いは、私にとっては紛れもない〝恋〟だった。
想えば、感じれば、私はいつでも彼の笑顔を思い出せる。そして、想い出の中の彼は面影となり、いつも私を励まし背中をそっと押してくれるのだ。
どんな些細なことでも、真摯に向き合わなければならないと、それが人としての生きる道だと―。その大切なことを私に教えてくれたのは、長い人生の中でほんのゆきずりで出逢ったにすぎない一人のフォトグラファーだった。
(第1話〝恋とも呼べない恋〟はこれで終わり、引き続き、第二部〝バージンロード〟が始まります☆)