逢いたいから~恋とも呼べない恋の話~
第1章 出逢い
彼は意味ありげに笑い、萌の眼をじいっと覗き込む。
「魔法をかけるんだよ」
「魔法!?」
先刻以上に声が裏返ってしまった。我ながら恥ずかしいとは思ったが、この男性が次々に意表を突くことばかり言うのだから仕方ない。
「つまりね。それは、こういうこと」
彼は、まるで小学生がとっておきの隠し芸でも披露するように得意げに言った。
「撮影する間、萌ちゃんに僕が色々と話しかけたでしょ。あれをやるんだ」
「撮る人と撮られる人がコミュニケーションを取り合うってことですか?」
何となく、萌にも彼の言いたいことが掴めてきた。
彼は意気揚々と頷く。
「そう、まさにそのとおり! 萌ちゃんは勘が良いね。さりげないトークをしながら、カメラマンと撮られる人が互いの距離をできるだけ縮めていって、自然な雰囲気で話ができるようになれば、もう占めたものさ。その人は僕の前で、生き生きとした、ごくナチュラルな自分、素に近い表情を見せてくれるようになる。その一瞬を僕は逃さずキャッチする。そういうことなんだ」
「それが長年付き合ってる恋人同士だと仮定すること?」
「まあね。特に成人式とかお見合い写真なんてのを撮るときには、そういう親密になれるような話をして、まずリラックスして貰ってから撮ることが多いかもしれない。流石に証明写真で何もそこまで言わなくても良いかもしれないけど」
と、彼はまた悪戯っぽい表情を浮かべた。
萌は、その表情に虚を突かれる。何という邪気のない顔をして、このひとは笑うのだろう!
「魔法をかけるんだよ」
「魔法!?」
先刻以上に声が裏返ってしまった。我ながら恥ずかしいとは思ったが、この男性が次々に意表を突くことばかり言うのだから仕方ない。
「つまりね。それは、こういうこと」
彼は、まるで小学生がとっておきの隠し芸でも披露するように得意げに言った。
「撮影する間、萌ちゃんに僕が色々と話しかけたでしょ。あれをやるんだ」
「撮る人と撮られる人がコミュニケーションを取り合うってことですか?」
何となく、萌にも彼の言いたいことが掴めてきた。
彼は意気揚々と頷く。
「そう、まさにそのとおり! 萌ちゃんは勘が良いね。さりげないトークをしながら、カメラマンと撮られる人が互いの距離をできるだけ縮めていって、自然な雰囲気で話ができるようになれば、もう占めたものさ。その人は僕の前で、生き生きとした、ごくナチュラルな自分、素に近い表情を見せてくれるようになる。その一瞬を僕は逃さずキャッチする。そういうことなんだ」
「それが長年付き合ってる恋人同士だと仮定すること?」
「まあね。特に成人式とかお見合い写真なんてのを撮るときには、そういう親密になれるような話をして、まずリラックスして貰ってから撮ることが多いかもしれない。流石に証明写真で何もそこまで言わなくても良いかもしれないけど」
と、彼はまた悪戯っぽい表情を浮かべた。
萌は、その表情に虚を突かれる。何という邪気のない顔をして、このひとは笑うのだろう!