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短編集2

第1章 傷跡












「父さん、もう"美月"はいないんだよ......」













父さんが大切な人を失ったのも雨の日だった。

















:どこに行っていたんだ、シロ。:



:父さん.....?:



:父さんだなんて、美月みたいなこと言わないでいつもみたいに名前で呼んで。:



:なに、言って.....:




:シロ、愛してるよ.....:





















僕の名前を呼んで父が抱くのは僕じゃない。






美月は僕じゃない。











シロは母さんじゃない。




















僕に彫られた美月という傷跡を、父さんはまだ、夢の中で信じてる。

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