捨て犬
第16章 もう言うなっ
「返してもらおうなんて
思ってねーよ……」
必死で
絞り出した言葉
「ごめん…なさい…」
だめだ…
俺
凹んでる
だからエミまで
もっと暗い顔
なにやってんだ俺は・・・
あんなにエミ喜んでたのに
この雰囲気
最悪だ
でも本当に
エミの給料
もらいたくなかったし
金、出してやってる
なんて気持ち
これっぽっちもない
あ~・・・
どうすりゃいいんだよ
「欲しいものなんて
ないんだもん・・・」
エミが
消え入りそうな声で
そう呟いた
「・・そうか・・」
なんか言ってやりたいのに
それから先の言葉が
見つからず
給料袋が
テーブルに置かれたまま
長い沈黙が流れた
「カズマは・・・
欲しいものなに?」
「俺?」
「うん・・」
なんだろ・・・
最近エミのことで
頭がいっぱいで
そんなこと
考えたことなかった
「俺もねーや(苦笑)」
「そうなの?」
「うん
なんか今は思いつかねぇな」
そっか
そんなもんなのかな
エミも
欲しいもの買えって
言ったって
本当に思いつかないのかもしれねぇ