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捨て犬

第16章 もう言うなっ

部屋に着いて
スーツから解放されると
すぐにエミが
パン屋の給料袋を
俺に差し出した


「はい、カズマ」


「え?」


「お給料」


「これはエミのだろ?
俺のじゃねーよ?」




「………」



その一言で
さっきまで機嫌のよかった
エミの顔が・・沈んだ


なんでそんな
悲しそうな顔するんだよ…エミ



「エミ
俺さ、最初に言っただろ?
エミに稼いでもらいたい訳じゃないって」




「………」




「エミが頑張って働いてもらった金だろ?
エミが好きなもん買えよ、な?
俺に遠慮しないでさ
欲しいもん買っていいんだよ?」


買ってもらえなかったんだろ?

・・・ずっと・・



「………」



けど
エミは黙ったまま
顔を曇らせた


せっかく
自由になる金が
手に入ったのに。



ふ~・・


どーすっかな・・




「エミ
給料テーブル置いて
ちょっと、こっちおいで」



俺は
エミと並んで
ベットに腰掛け
優しく腰に手を回した




「なんで…なんでさ

エミは俺に給料渡すの?」




「……私…

カズマに沢山
お金出してもらってるから…」




「だから?」





「だから…」




「うん」






「・・・・返す」




その言葉を聞いた瞬間

俺の生きてる全ての機能が

止まった気がした




「・・・・・・そっか」






返す…


か…





返したらさ


「終わり」みたいで




すげー嫌だ

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