捨て犬
第17章 もっと・・近くに
こんな時間に
わざわざ電話してくるなんて
エミに
何かあったに違いない
俺は胸騒ぎを覚えながら
携帯電話を握りしめて
事務所の外に飛び出した
「もしもし、カズマですけど
おばさん?どうかしました?」
「カズマくん!
ごめんね~・・
あのね、エミちゃんが
ちょっとケガをしちゃって・・」
「え?!ケガ?」
俺の胸騒ぎは的中した
「え、えぇ、今ね
病院で治療中なんだけど
ちょっと指を切ってしまって」
おばさんも
ちょっと動揺してるみたいで
いつもと声が違う
「あ、でも大丈夫よ
ケガはひどくないから」
「なら…よかった……」
「でも、エミちゃん
ちょっと動揺しちゃって……」
仕事中
食パンの裁断機で
エミは指を
切ってしまったらしい
パン屋では
よくあることらしいんだけど
運が悪いと
指を落としたりすることも
あるって
おばさんは俺に話してくれた
幸い
エミのケガは軽かったけど
出血がひどく
エミは身体を震わせてて
様子がおかしいらしい
おばさんは
ケガよりもそれが心配で
エミを病院まで
迎えに来て欲しくて
俺に電話をかけたそうだ
「仕事は早退して
すぐに病院に行きます
病院の名前は?」
俺は
病院へ向かうことにした
父親の暴力で
大量に出血したりしたことが
あるんだろうか・・・
また俺の心に
不安が
押し寄せてきていた