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捨て犬

第17章 もっと・・近くに


急いで病院に向かうと

エミは
おばさんに手を握ってもらったまま
身体を小さくして
俺を待っていた


「おばさん、遅くなりました」


「あ、エミちゃん
カズマくん来てくれたわよ?
よかったわねぇ」


エミは
あの夜のように
身体を震わせていて
おばさんは相当心配しただろうと
俺は思った


「おばさん、ありがとうございました
エミ?大丈夫か?」


エミは
黙ったまま
コクッとうなずいた

いや

喋れないのかもしれない



「じゃあ、カズマくん
エミちゃん頼んで大丈夫?」


「はい、大丈夫です
心配かけて
すみませんでした」


「いいのいいの
おばさんこそごめんなさいね?
治療代は出しておいたからね
あ、それから
しばらく…
バイトはお休みよね?
これじゃ、重いもの
洗わせられないもの」


「迷惑かけて
すみません・・」


「なに言ってるのぉ
私もね、もっと注意して
あげればよかったんだけど
ごめんね、エミちゃん
じゃ、おばざん行くわね?
お店があるから。
エミちゃん、またね?」



「はい・・・」



おばさんが
見えなくなってから

俺は
エミの肩を抱いた


「エミ・・・痛いか?」


「・・うん・・・」


「痛いの・・嫌なんだよな?」


「・・ん・・」


もう
泣いちゃいそうだ


「ゆっくり
歩いて帰ろうか。
俺、もう仕事早退してきたから
ずっと一緒にいられるからな?」



「・・よかった・・」



そう言って
エミは
俺の肩に頬をすりよせた


「さ、帰ろう
帰らないと
抱きしめらんねー」


そう耳元で囁き
俺は
エミの手を握った

エミは
少し落ち着いたみたいだったけど

そんなことしか
できねぇ俺は

なんだか


情けなかった

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