テキストサイズ

捨て犬

第19章 見せらんねーのかよっ!


そんな気持ちを抑えられないまま
煙草をギュッと
灰皿に押し付け
俺は
すげぇ早足で歩き
エミの目の前に立った

「エミ、誰とメールしてんだ?
携帯見せて」

そう言いながら
手を出すと
エミは
ぎゅっと携帯を握りしめ
携帯を隠すように
両手で
自分の胸元に押し付けた


はぁ?!


俺に見せられないのか?



こないだまで
メールが来るたびに
俺に見せてたじゃんか!
なんだよそれ!


「見せらんねーのかよ!!」

分かってる
言い方キツイし
声もでかい

でも、抑えらんねぇ


「ご、ごめんなさい…」


エミを見なくても
その声だけで
エミが
完全にビビってるのが分かった


「はぁ〜……
いーよ、分かったよ
もう帰ろ

あ、でも頼むから
家に帰るまで
メールすんのやめてくれよな」




「うん…」




最悪。




最悪なムード
最悪な時間
最悪な…俺

何やってんだ、俺


分かってる
急に怒りだした俺も悪い
けど
どうしても
冷静になれなくて

どうしても

優しくできなくて…

俺たちは
ひとことも話さないまま
電車に揺られ
最寄りの駅に着いてしまった


このムードのまま
家に帰りたくねぇな…


「エミ
先帰って飯作っといて。
俺、ちょっと寄ってく所
あるから」


「え……うん……」


不安そうな顔をするエミ

そんなエミを見て
俺は正直
ちょっとホッとしていた


それは
俺が居ないと不安だって
エミが思ってることを
喜んでるって事だよな


最悪だな…俺


ストーリーメニュー

TOPTOPへ